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☆未来からの切符☆ 第1話 序章

2009年1月

この街では新しい年が明けてもう半月も過ぎるというのに行き交う人々がまだ口を揃えて新年を祝う挨拶をあたり前のように交わしていた。「どぅも明けましておめでとうございます」「ほんと今年はいい年になるかしらねぇ?」

2008年は米国発の金融不安を皮切りに世界各地で大型倒産が相次ぎ、国内でも建設業界の経営不振をはじめ大手自動車メーカーでも大規模なリストラが決行されるなど100年に一度と言われる大不況が年の終盤から襲い掛かっていた。

翔子は関東平野でも北限に近い山裾の小さな街に暮らしていた。彼女の住む街も決して楽観できるほど平和な雰囲気ではなかったが、それでも年を越せずに国の提供する施設に群がる人達でごった返す都会ほど不況の波は迫っていなかった。

翔子には地元の大学に通う娘と高校に通う息子の二人の子供がいた。早朝遠距離通勤の夫を会社に送り出した後は二人の子供たちの身支度の世話、食事の後片付けに掃除洗濯と一般的な家事をこなし、その後は地域の美化委員のボランティア活動とそれなりに忙しく動き回っていて、この先米国の経済をオバマ新大統領がどのようにして立て直して行くのかとか、突然解雇になった派遣労働者にどのような救済措置がとられるのかと言うような事柄は彼女にとって差し迫った問題ではなかった。

正月気分も抜けたある朝、いつものように二人の子供たちを送り出した翔子が一通りの家事を済ませボランティアに向かう支度をしているところに一通の封書が届いた。それは娘の凛(りん)宛てのものだったが差出人欄を見た翔子は一瞬息を飲みもう一度宛名を確認した「やっぱり凛宛てだわね...」

翔子には差出人欄に書かれた住所に見覚えがあった。「東京都中野区新井1丁目...番地まで一緒だわ...」そこにはかつて翔子が密かに心を寄せていた彼、駿(しゅん)が学生時代に住んでいた住所が書かれていた。勿論今では駿がそこに住んでいないことも翔子にはわかっていたし、差出人の名前も駿とは全く別人であることも一目でわかったのだが、今から20年以上も前のある日、全く同じ住所から自分あてに送られて来た一通の封書を受け取ったときの記憶が蘇った翔子は、高まる鼓動を押さえきれずにいたのだった。

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